はじめましてマスター
広い部屋はコンピューターなどの機械類のせいで、もともとの半分以下の広さにまでなっている。床には一面コードが広がっており歩くのも一苦労しそうな様子だ。そんな中、カタカタとキーを叩く音だけが響いている。
一人の男がコンピュータに向かっているのだがディスプレイの文字は驚くほどの速さで変化していく。
常人には訳の分からない数字や英語がこの男には自分の体の一部のように理解できる。
そして、最後の仕上げとばかりにタンッとキーを一つ叩いた。
「よし完了」
男が操作していたコンピューターからは無数のコードが延びており、所謂アンドロイドと言われるものに繋がっている。先ほどまでしていた作業はこのアンドロイドを起動させるものだったらしく、腕や足などが微妙に動き出した。
アンドロイドは男性型で青い髪をしており、徐々に開かれていく目も蒼い。
男は目が開ききったのを確認し声をかける。
「おはよう。体の状態はどうカイト?」
カイトと呼ばれたアンドロイドは確かめるように手を一度握ってその声にこたえた。
「おはようございます、そして始めましてマスター。全ての部分に異常なし良好です」
「うん、始めまして。それはよかった。俺はよろしくね」
「はい。よろしくおねがいします」
ががうれしそうに笑うと、カイトも笑う。
は世間一般には天才といわれる種類の人間だ。だが、自信にはまったくその自覚は無く自分の好きなことを好きなだけしているだけだという認識しかない。やや引きこもりがちではあるが友人も普通うに存在し、浅く付き合う分にはまったく一般人だ。ただし、仲の良い友人に言わせると『あいつは間違いなく変人でバカだ』『何とかと天才は紙一重っていうしなー』などの答えが返ってくるぐらいの性格ではある。
「ふふふ。それにしてもカイトは思った通り可愛いなー」
「ま、マスター?」
起動してすぐに自分のマスター(しかも同姓の)からこんなことを言われたら誰だって混乱するに違いない。カイトは見た目には成人を終えたぐらいの青年だが、中身は設定されているとはいえ生まれたばかりなのだ。対処の仕方だって碌にわからずうろたえるぐらいしか出来ない。
その様子を見てまた更に可愛い可愛いと連呼する。そして、それにまたまたうろたえるカイト。とエンドレスの悪循環が行われていた。
「おい、いい加減にしたらどうだ?お前周りから見たらどう映ってんのかわかってんかよ」
いつの間にか入り口に男が一人立っていた。とカイトのやりとりを見ていたのか呆れて言葉も出ませんって顔をしている。(しっかり突っ込んだけど)
「別に周りとか気にしないからいいよ。それより、何か用なの風歌?」
「連絡取れないから死んでないかの確認。そんで、それがお前が人間の三大欲求を無視して造ってたやつか?」
「それはどうもご苦労様。カイトって言うんだ、可愛いでしょう」
の場合は連絡が取れないというより、何かに集中すると取る気がないと言った方が正しく、定期的に誰かが世話をしに来ないと餓死してることは決定事項であろう。
そして、今回の哀れな被害者は友人その1の風歌である。の友人たちは面倒を押し付けあって最終的に風歌に周ることが最も多い。腕っ節は強いし口もいいとは言い切れないが、何気に面倒見が良かったりするものだから放っておけないらしい。
「始めまして。マスターのお友達ですか?」
「ん、始めましてカイト。俺は藍本風歌、風歌でいいぞ。それとそいつとは友達っつーか、俺が面倒見てやってるんだから命の恩人とかか?」
「えー大学のレポートとか手伝ってあげたんだからお互い様だと思うよ」
「ああ、お前に手伝ってもらったレポートは間違いなく俺がやったものじゃないと教授にばれてるけどな」
「そんなことまで責任もてませーん」
「もうちょうっと一般レベルでしろよ。この前のやつなんか学会で発表させてくれって教授が頼み込んできたんだぞ」
「ふーん。俺の名前出さないんだったら好きにしていいよ」
「あいにく俺もそんな面倒はごめんだ」
「やっぱりお二人は仲良しですね。うらやましいです」
二人の横で成り行きを見守っていたカイトがそう言うと、はうれしそうな顔をし、風歌は複雑そうな顔をした。
「大丈夫だよ。俺はカイトともすごーく仲良しだから。もちろん風歌も」
「まぁそういう訳で仲良くしてくれよカイト」
「はい!マスターと風歌さんありがとうございます!」
二人の言葉を受けてカイトは満面の笑みでうなずいた。
大好きですマスター
「やっぱりカイトは可愛いな」
「マスター・・・」
「諦めろ。こいつはこういうやつだ」
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後書き
何かカイトよりオリキャラの方が出張ってるような気がorz
だって書きやすいんだもん!(逆切れですが何か?
ついでに裏設定としてオリキャラの風歌君は彩雲連載の主人公だったりします。友情出演ということで
2008/12/4