26.彼の笑顔
夕ご飯も食べ終わってリビングでくつろいでいる一時、洗濯機が機械的な音を鳴らした。私はそれに反応し洗濯物を干しに行こうとしたが、あやめちゃんが干してきてくれるというのでお願いすることにした
あやめちゃんが部屋から出て行き静かになったリビングでチャンスと思い口を開く
私はあんなことがあったけどあやめちゃんは好きなのであんまり聞かしたくない話をここで切り出すことにしたのだ
「ねぇ、恭兄あの時さー本当に死ぬつもりだったの?」
「あの時?」
「聞き返すようなこと?恭兄はそんなによく死にかかるわけ?―――はぁーその話しは後でいいや、この前の事件のことだよ。あやめちゃんに連れて行かれそうになって助けにいったけど黒服機関の人に殺されかかった時のこと」
「ああ、あの時か。そうだなそれでもいいと思ったことは事実だ」
「―――っ・・・恭兄はさ、私のこと嫌い?」
「ん?どういう意味だ」
「そのまんまの意味よ。恭兄、私は恭兄のこと好きだよ。だから、私のことおいていかないで・・・お願い」
「―――悪いがその約束はできない。それに好きや嫌いといった感情と、俺の行動は関係ない」
「・・・言うと思った。やっぱ聞かなきゃよかったかなぁ」
こういう時はウソでも約束してくれればいいのに、かわいい妹のお願い事だって言うのにね
ここは笑顔で俺はどこにも行かないよっていう場面だと思う・・・ウソですそんな恭兄想像できない
でも、なんか納得できない恭兄がいなくなるって決まったわけじゃいけど、いつか消えちゃいそうな気がする。私とか文芸部の先輩たちとか心配してくれる人たちがいても自分の行動を止めることはしなさそうだなぁっと思ったら本当に納得できなくなって腹が立ってきた
「恭兄。恭兄が何をしようが、自分を大切にしないって言うんなら私は邪魔しまくるから。私は頭いいほうじゃないけど私の全能力をかけて邪魔するからね、もちろん回りを巻き込んで。だから覚悟してて」
私は恭兄に先制布告するかのように言い放った。それを聞いた恭兄は眉を寄せ何かを少し考えるような表情をした後、鼻で笑った・・・鼻で笑ったのだ!私なんか障害にもならないとでも言うように!
「鼻で笑うな!私は真剣なの!」
「そうか、それではがどのような行動に出るか楽しみにしていよう」
「だから、その言い方がバカにしてるって言ってんでしょ!こっちが心配してあげたのになんいう兄だ!もぅ知らない・・・あやめちゃん手伝ってくる!」
恭兄にからかわれて怒った私はリビングをドタドタと足音を立てて出て行った。そして、二階で洗濯物を干しているあやめちゃんを手伝いながら大声で愚痴っていた私は、優しく微笑んだ恭兄の顔を見ることはなかった
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後書き
「09,死ぬ」の後日談みたいなものです
魔王様はそんな優しい顔で笑わないと思うんですけど、そこはお約束とか思っておいてください・・・
そんでなんで笑ったかというと主人公ちゃんが必死で心配してくれてるのが面白かったとかそんな理由だと思います。決して嬉しいとかじゃないとこが魔王様たる由縁なんです
2007/8/5
title by:Missing創作家に50のお題