03.お嬢様って結構疲れるのね・・・
あの後、ローレライが時間を撒き戻す。とか神様っぽいことを言ったとたん意識が沈んだ。
そして、次に目を開けると自分の経験したことがない記憶が流れ込む。たぶんこれはローレライが用意したものだと思う。
その記憶曰く私は、“ルーク”の遊び相手としてこのお屋敷にいるらしい。身分的にはそこそこいい貴族様の娘。
それから、ただいまの状況は“ルーク”が誘拐されたらしい。と言うことは今頃“ルーク”が誕生しているってことだよね。
さて、“ルーク”が帰ってくるのを待ちますか。
あれから数日後、“ルーク”が帰ってきた。
「あ、久しぶりルーク」
「あ、・・・ぅ・・・」
「ん?ルーク?」
はて?ルークの言いたいことがさっぱりポンとわからない。
ルーク巻き戻ってないのか?
「様、ルーク様は全ての記憶をお無くしになっておいでです」
「あー・・・それは大変だぁ」
ちょー棒読みの私の台詞もなんのその、他の人たちは蒼白なお顔でいらっしゃいますわ。
確かにそう言う設定らしかったけど、まあ実際なくしたんじゃなくてこのルークは今生まれたんだけどね。ついでに言うとこのルークも巻き戻ってちゃんと色々知ってるはずなのにな。
もしかしてこれ演技?記憶とかないふりかな?いやーでも、そんな感じじゃなくてむしろ動きたいのに体がいうこと聞かないみたいな感じかな。―――あーもしかして体動かないの?新しく出来たばっかりの体って動かしにくいのかもしれないな。
それじゃあ、ちょっと様子見だね。
そういや、アッシュは大丈夫かな?予想ではあっちに御華くんついてる気がする。だってここにいないし。たぶんアッシュの近くにいるでしょー
「ルークが記憶喪失なんだったら色々教えてあげなくちゃいけないのね。私ぜひルークの先生になりたいわ」
このお屋敷の使用人、ラムダスにそう言う。とりあえず今、追い出されたら困っちゃうし。
「様お心使いありがとうございます。ですが、私にはそれを決める権利がございませんので、クリムゾン様に進言くださいませ」
「わかりました。ありがとうラムダス」
にゃるにゃる。確かに一介の使用人に教育係を決める権限なんかないよね。って言うか私が教育係になるのはまず無理だろうけど。だって、私10歳だし。
どこの世界に10歳の小娘に教育させる親がいるのよねーしかもされる方とする方の年齢一緒とかちょと笑える。それに、ルークのことこれから洗脳しなくちゃいけないから国王の息のかかった人たち送られてきそうな気がするよ。あと、悪の親玉らしいヴァンって人もか。じゃー私はこれまで通りお友達ポジションの死守だね。そんでもって、ガイって人をとりこまなくちゃいけないのかな。やることいっぱいでもうすでに面倒くさい・・・
取り合えずファブレ侯爵に会いに行こうかな。そっからだよね。
「ファブレ侯爵、ルークが無事戻ってきてくれて私もほっとしています。これからもどうぞよろしくお願いします」
何か言いたそうな顔してるけど無視かな。記憶喪失を無事と言うのは微妙だけど、本当のことを知っている私からしたらたぶん無事だからいいっか。
さて、あいさつもしたことだしルークかまいに行こうかな。
「ルークのことは是非私にお任せください。微力ながら力添えさせていただきます。きっとすぐに良くなりますよ」
そう言い残し、部屋を出るとガイがいた。
ガイは一応使用人ってことで皆が見ているところじゃ私を貴族様として扱っている。でも人の目がないとこじゃ友達なんだよ。
「様、ルーク様のところに行かれるのですか?」
だから、私もそれに合わせてお嬢様します。このお嬢様の演技って実はすごい疲れる・・・だって平凡な庶民ですから私!
「はい。少しでもルークの為になればと思うので」
「それでは、私もご一緒いたしましょう」
んーそれはご遠慮いただきたい。まず、ルークの今の状態調べないといけないし、ガイがいると秘密事項話せないからなぁ。
どうにかして一人でルークのところに行こうと考えていると、ラムダスがガイを呼びとめていた。
「ガイ、ヴァン様が探されていました。広間においでです」
「あ、わかりました。―――様、申し訳ございませんが、用事が出来ましたのでこれで失礼させていただきます」
「ええ、わかったわ」
よっしゃー!!ヴァングットタイミング!悪代官的な話しでもするんだろうけども今は助かったよ。
と言う訳で、ルークんとこに行こうかな。
私もいいとこのお嬢様なもので、メイドさん的な人とか執事さん的な人とか私とすれ違うとお辞儀してくれるものだから平平凡凡、一般市民な私は内心実はビビってます。
へこへこ頭下げそうになるけど、そんなことお嬢様はしちゃダメだし、優雅に微笑み返してます。(疲れる・・・)
神経すり減らしながらルークの部屋まで来ると扉の前には白光騎士団の人ががっちり見張りしてる。そら、誘拐されたばっかしだから警戒しなきゃならないのもわかるけど、こうなると不審者を入れないようにしてるのか、中の人が逃げないようにしてるのかわかんなくなってきちゃうよね。って言うレベルの仰々しさ。
「お疲れ様です。ルークに会いに来たのだけれども」
「はっ、どうぞお通りくださいお嬢様」
「ありがとう」
だてにルークの幼馴染(的なローレライ作記憶)やってません。顔パスでOK
中に入るとメイドさんが1人いてルークの世話をしていた。今までのルーク専用のお世話係さんじゃなく(これもローレライ作の記憶だけど)、知らない人に代わってる。新しい人雇ったのかな?
「ルークの様子はどう?」
「えっと・・・お元気でいらっしゃいます」
要するに意思疎通できないからぶっちゃけよくわからん。と言いたいわけだね君。外見10歳児、中身0歳児(な設定)なだけに困ってるんだ。まあしょーがないね。
「ルークと二人でお話したいんだけど?」
「はい、ですが今のルーク様は話すことは難しいかと存じますが・・・」
「そう、少し二人きりにしてもらえる?もしかしたら私のこと思い出してくれるかもしれないわ」
何とかメイドさんを追い出すことに成功した私はルークの方に向き直り、取り合えずつついてみた。
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後書き
2010/07/01