08.殺人鬼じゃなくて疫病神の間違えだろ






「パス!こっちだって!」

「藤代お前敵だろーがよ!誰がパスするか!」

「え〜いいじゃん。ボール来なくてつまんないもん」

「つまんないもんとか言われてもね〜藤代みたいなでかい男がもんとかつけてもかわいくないよ」

「そうだぞ。んなこと言ってないで奪えに行けよ」

「しょーがないなー田上!覚悟ぉ!!」

「え、ちょ、待て、って!」


子供は元気だなーなどと少々ジジくさいことを職員室の窓際で考えながら校庭で体育の授業をしている生徒を見ていた。
早速、問題児だと自分の中でブラックリストに載せている藤代は得意分野のサッカーで水を得た魚のように生き生きとしている。自分が受け持っている数学の授業と天と地の差ほどもある態度は見ていて少々複雑な気分にもなるが楽しそうな表情を見ているとまぁいいっかーとなるのは不思議だ。
タメ息をつき飲んだお茶を思わず噴出しそうになったが、そこは何とか飲み込み急いで校庭近くの校門まで走っていく。
一瞬見えただけだったがあれは間違いなくあいつだ。よく見知った、でもあまり係わり合いになりたくない奴でしかも何でこんな場所にいるのか、嫌な予感が頭を走る。


「人識!」

「よぉ

「よぉじゃねえ!何でテメェがココにいるんだよ!」

「んーなんでだと思う?」

「そんなん俺が知るか!今すぐ出て行け」

「ひでぇの。せっかく東京までの顔見に来てやったのにそんな言い方したら俺がかわいそうじゃん」

「わざわざ京都から俺の顔なんか見にこなくていいし、殺人鬼に尋ねられている俺のほうがかわいそうだ」

「かはは・・・ま、そりゃそうだ」

「いや、お前ホント何しに来たんだよ」

「あー・・・今さーちょっとやばい相手に追われんの。だから匿って?」

「厄介なのって?」

「あれだよ。人類最強」

「ムリ。不可能。ありえない」

「即答かよ!?」

「当たり前だ!あんなのに追われてるとかお前何してんだよ!?」

「や、普通に殺人だけど」

「・・・わかった。わかりたくないけどわかったから、お前はもう帰れ。帰って潤に殺られてこい」

「うわ〜殺られてこいってヒド!こんなかわいいいたいけな少年が困ってんだぜ?助けてくれたって罰はあたらねぇと思うけどな」

「顔と身長がかわいいのは認めるがいたいけな少年ってのは頂けないな。後お前みたいな奴を助けたら罰は当たりそうだ。まぁ、そう言う訳で厄介事を俺のとこに持ち込むな」

「そう言われてもなーもう俺、のとこ転がり込むの決定してるからムリ。じゃあ先帰って日夜とでも遊んでるわ」

「あほか!!って聞けえぇぇ!!!」


自分の言いたいことだけを言ってさっさと行ってしまった殺人鬼。その後姿を呆然と見送る俺。
(どうしてあいつら(零崎家)は厄介事しか持ってこないんだ!そう、いっつもいっつも!軋識はまだいい。あいつはなにげに常識人だし、日夜の面倒をよく見てくれるからな。でも人識と双識はマジで俺の前に現れてくれるな!絶対にあいつら二人は殺人鬼じゃなくて疫病神に違いない)
人識を不覚ながら見送ってしまった後、頭の中は人識の愚痴とやや八つ当たり気味に双識への文句で構成されていた。










「あれ?ねーねー間宮あの声先生じゃない?」

「あそこだ」


間宮が言葉と一緒に指を差したほう、校門のところを見ると先生が派手な頭の人(先生もだけど)の後姿に向かって怒鳴っているところだった。


「ほんとだ。珍しいね先生が怒鳴ってるのって。あ!でも前屋上でも電話で怒鳴ってったけ?」


間宮は先生に興味がなくなったのか自分のポジションに戻っていった。でも俺は気になったから校門の方に行ってみることにした。



「いっちよーせんせーどうしたんスかぁ?」

「ん?ああ、藤代か。いやちょっとな―――」

「ムー先生いっつもそうやって誤魔化す!」

「あー個人的なことだし、お前らにとったらたぶん小もないことだと思うんだがー」

「そんなん聞かなきゃわかんないッスよ」


フェンス越しで距離が開いていたけど、俺が問い詰めると困ったような顔をしながらフェンスの方に近寄ってくる。


「さっき俺が話してた奴見たか?あいつが問題児でな、また厄介事持ち込んできたんだよ」

「へーでも先生ってそんな感じッスよね」

「は?おい、会話噛み合ってか?なんでそこでそんな答えになんだよ」

「何か貧乏くじ引いてそうって言うか、苦労人って言うか、頼られやすい感じってことです!」

「そういう意味ね。お前言葉たらなすぎ。それはそうと、貧乏くじとか苦労人ってどういうことだよ・・・」

「よくタクとかにも言われます。でも当たってるっしょ?」

「はー(俺はこんなガキにまで分かられるぐらい単純なのか?)もう何でもいいから、お前は授業もどれよ。向うで先生睨んでんぞ」

「うわっほんとだ!じゃあね」

「おう。がんばれよー」


先生に言われてグラウンドの方を見ると、すっごい鋭い目つきで睨まれている。
急いでみんなのいるとこに戻ったらやーさん(本名は矢車。やくざみたいな強面な顔と名字に引っ掛けてやーさんってあだ名になった)に怒られた。(いいじゃんちょっとぐらいー)





<<back      next>>



後書き
人識はかわいいよね!以上!!

2007/11/22