03.
「セルティさーん」
【どうした?どこか痛むのか!?】
「いやぁ今んとこ痛いとこはないから。足は大したことないし自分で歩くよ?」
【そんなことして怪我が悪化したらどうするんだ!昨日までみたいにまた40度近い熱が出るかもしれないんだぞ!】
ぶっちゃけ怪我をした日からセルティ―さんの過保護生活が始まった。
静雄さんやらと話をした後熱が急激に上がり(たぶん話してる途中に上がったと思われるけど言いだせる雰囲気じゃなかったし黙ってた)それから3日ほど生死の境を行き来してたわけで、その間主に甲斐甲斐しく私の面倒を見てくれたのはセルティ―さんだった。
もちろん医者として新羅さんも診てくれてたわけだけれども、一応これでも女だから男の新羅さんじゃ不便な時があると言うことでセルティ―さんが何やかんやと世話してくれたらしい。らしいと言うのはその時の記憶があいまいでうっすらとしか覚えていないからだ。
たぶんセルティ―さんに心配そうに頭をなでられたと思う。それから静雄さんの泣きそうな顔もあった気がした。新羅さんのことはこれっぽちも記憶にないがな。
それで熱もほぼ平熱近くまで下がった今日なのだが、昨日まで高熱があって体力も回復しきってないみたいで足元が若干危ない。それは自分でもわかっている。しかも大腿骨にひびがちょびっといってたりして歩くと少し響く。まぁでも歩けないこともないと言うのが私の主張だ。セルティさんの主張といえば、
【取り合えず絶対安静!!トイレなら私がこれで連れていく!】
と言うことらしく、影みたいなものをもわもわだして私を壊れものを扱うかのような丁寧さで運んでしまっているのだ。
で、最初の会話に戻る。
今日起きてからこれの繰り返し。まず寝汗がひどくまだお風呂に入れない私を濡れタオルで拭いてくれたところで自分でやると言うとそく却下され、朝食を無事な方な左手で食べようとしたらスプーンを取り上げられ新羅さんに睨まれながら“あーん”をしてもらう。等々とっても過保護なセルティさん。
何だかちょっと実家を思い出したよ・・・
「セルティ大分張りきってるみたいだね」
「ええ、って言うか新羅さんからも何とか言ってあげてよ」
「そんな!あんなにうれしそう君の世話をしているセルティに僕は何にも言えないよ!!もしあの素晴らしいセルティの笑顔が曇ってしまったらどうするんだい!?それこそ一大事と言うものじゃないか!それに君はまだ動き回っていい状態じゃないんだからおとなしく世話を焼かれてるといいよ」
私の状態は取ってつけたような言い方だった。絶対セルティさんの方が本題だろう。しかも笑顔ってわからん!顔ないし!
「はー・・・はいはい、後この状態を何日続ければいいわけ?」
「んーそうだね。君って本当に回復が早いんだね。静雄ほどまではいかないでも十分人間的には驚異な回復力と言って差し支えないよ。そんなわけで、3日ほどしたら少しずつ日常生活に必要なことをしていこうか。それから一週間ぐらいで静雄の家に移ってね。定期受診は一週間に一度だから」
「えっ一週間!?はやくない?本当に自分で何もできないじゃん私」
「だから静雄の家に行くんだろう。自分で出来たら世話人は必要ないわけだし」
だからって、ねー
何て言うかまだまともに静雄さんと話したことないし気まずい・・・
あの時は熱も上がってきてて思考回路が多少迷走していた気がするし、今考えるとできればここに置いてほしいというか・・・過保護でもセルティさんの方が気が楽。何といっても女の人だし!ちゃんと考えるとそこ重要なんだよね!私一人で風呂入れないじゃん!まさか静雄さんに入れてもらう訳にいかないし。いくらなんでもそこまで恥を捨てきれてないのよ。
「あぁそうだ。当分お風呂は禁止だから」
「えっ何で?」
「血行の巡りよくなったら傷口に悪いでしょう。その胸の傷や他のもだけど抜糸も済んでないんだからね。だからせめて抜糸が済むまでは清拭で我慢してて」
「えー気持ち悪いよー頭も洗いたい」
もうそろそろ女としてやばいんじゃないかなってぐらい臭ってる確実に。
これ以上は人としてどうなんだろうってレベルだからさすがに勘弁!
「風呂場で頭だけ洗ってもらったらいいんじゃない?ほら、美容院でやってもらうみたいに」
「なるほど。でも体も気持ち悪いって」
「それはだめ。はー・・・―――こんなに元気な怪我人は静雄や臨也だけで十分なのにな・・・」
きっぱりと断られと思ったら後半ため息をついて小声でぶつぶつ呟いている。生憎声が小さすぎて何を言っているのかは聞こえなかったけど。
この後セルティさんにお願いして頭を洗ってもらった。
あーさっぱり!影を利用して本当に美容院にある椅子みたいにして頭を洗ってくれたのでちょっと感動した。そんなことまで出来るんだー
その時に一週間ぐらいでここを出るって話をしたらえらい悲しまれた。私だってここに居たいのやまやまだし寂しいけど何時までもここでお世話になるのはダメだろう。セルティさんも仕事あるし、新羅さんの予備のベットを占領しっぱなしじゃあ何かあった時に対応に困るだろうしね。
さぁ、静雄さんの家に行くまでにがんばってリハビリするぞ!
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後書き
しず、お・・・
2011/01/15