第五訓
「なぉねぇちゃんよ、ちょっと俺らに付き合わねぇか」
はい、お約束なパターンきた。
江戸に入ったと思ったらこれだ。やっぱり都会はこうゆう輩多いのかねー。
「私急いでますんで失礼します」
にやにや笑っている気持ち悪い男たちの横をすり抜けようとすると、汚い手が私の細くてかよわい腕をつかんだ。(白魚のような手でもいい)
ま、このまま逃がしてくれるなんてこれっぽっちも思ってなかったけど、トイレの後手を洗ってるか不明な奴らにつかまれるのはいただけない。なので、思いっきり振り払うと私の腕をつかんでいたやつの顎にいい拳が入ってしまった。
すると、
「おい!てめーこっちが優しくしてりゃつけあがりやがって!」
「覚悟できてんだろうな!」
となるに決まってるわな。
もともとピンチだったのに余計にピンチになってどうするよ私。
自慢じゃないがケンカはめっちゃくちゃ弱い。子供とケンカになっても負ける自信がある。いつも危なそうになったらダッシュで逃げる以外のコマンドを持たない私が、気持ち悪い男どもに勝てるわけがない。逃げようにも後ろは壁、前にはゴロツキ。もうだめじゃん・・・
せっかく江戸まで来たっていうのに、こんな仕打ちはあんまりです神様(信じてないけど)
どうにか逃げられないか辺りを見回してみたり、頭を捻ってみたりする者の絶対絶命以外の選択肢が出てこない。
ここまでか・・・と諦めかけていたが、男たちが急にバッタバタと倒れて行くではありませんか。
最後に一人が「な、何だ!」と言って倒れると、その後ろから刀を持った一人の青年が現れた。
片目を包帯で隠し、着流しを気だるげに来ているがお色気むんむんって感じで、足元に倒れているきちゃない男どもとは天と地の差もある。ただし、私の危険察知センサーもさっきとは比べ物にならないほどビンビンに鳴ってますけどね!
すんごい殺気感じるんですけど、私何かしました?
取り合えずここはごまかしながら自分の命を守るしかない!
「え・・・あの、助けてもらってありがとうございました。私、江戸には着いたばかりなのでお礼もできないので、心苦しいですがこれで失礼します」
と言いつつ競歩並みの足早さで立ち去ろうとしたが、それはやはり失敗した。
さっきつかまれたところと同じところをもう一度つかまれた。先ほどは気持ち悪くて鳥肌が立ったが、今は命の危険から鳥肌が立つ。
「こいつらが邪魔だったから切っただけだ。お礼なんて期待しちゃいねぇよ」
「はぁ、あのーじゃあ何か?」
お礼期待してないんだったらこの手離せよこの野郎!
もちろん口に出してなんて言えないので心の中で思いっきり罵っていると、男はにやっと笑った。
うを!?めっちゃ鳥肌立った。チキンもびっくりな立ちようだよ。
「お前どこで会った」
「ナンパはお断りです」
疑問形じゃなく断定されたナンパの常套句は珍しいし、こんな状況で言う言葉じゃないだろ。思わず速攻で断わっちゃったよ。
条件反射で言っちゃったけど切られないようね私?
「勘違いするなお前みたいな色気のない女なんか誰が相手にするか。お前、医者か?」
色気なくて悪かったわね。どうせちんくしゃですよーだ!
「医者ですけど何か?」
ってか何で私が医者って知ってんだ?見るからに医者っぽい?
「・・・攘夷志士の掛かり付けの医者になってなかったか?」
「へ?まあしてましたけど、何でそんなことまで知ってるんですか?」
「生きていたのか。それに何であの頃と変わっていない?」
私の質問に答える気ないなこいつ。
しかもわけのわからないことばっかりいやって!なんだよもう!
「何を言っているのかわかりま「」
「え?何で・・・」
私の言葉を遮るように言ったのは、私の名前だった。
素性も知っているようだし、この男何者?
「ほう、自分の患者のことなどすぐに忘れるのかお前は」
「患者?・・・私あなたのこと診たことがあるの?」
患者ね・・・男の顔や全身をじーっとくまなく見つめる。
最初に頃感じた殺気は、今は全くというほどなく苛立たしげな雰囲気が伝わってくる。
そういえば、何か見たことあるかも。えーっとどこでだろう。そう言えば、生きてたのか。とか、何で変わってない。とか言われたと言うことは、もしかしてタイムスリップする前からの知り合い?
・・・・・・・・・・あっ、もしかして!
「あーもしかして晋介くん?」
「ああ、やっと思いだしたか」
はわぁーまじで晋介くんですか。なかなか男前になってらっしゃる。
あの少年が10年たったらこんな風になるわけね。納得納得
「忘れてたわけじゃないんだけど、こんだけ成長してたらわかんないし」
それにしてもなんか余計ひねくれてる感じ?
昔もなかなかにつんつんな子だったけど、今はむしろ色気垂れ流しの悪役みたいだな。
さて、毒牙にかからないうちにさっさと説明しようかな。
じらしてたら、鬱陶しいの一言で切り捨てごめんされそうだしね。
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後書き
すんません。いまだに晋介坊ちゃんの喋り方アンドキャラがつかめていません。誰これ状態なのはスルーしてもらえるとうれしいです。
ついでに今の年齢、主人公23歳、晋介26歳、銀時27歳、辰馬と小太郎28歳です。ちょー捏造です。だってちゃんとした年齢わかんないだもん。知ってる人いたらこっそり教えてください。修正します。
あ、ちなみに今は原作1年前です。
2010/09/28