第四訓





青く澄み渡り、気持ちまでも軽くしてくれるような青空の下私たちは遠慮なく気持ち的なものを解放させてもらっている。


「いやー今日もいい天気ですねー」

「そうじゃなー先生は相変わらずみたいだがね」

「あははは・・・まあ弦さんも相変わらずみたいなんでお相子ですね」


そう言う私たちは縁側に座り日向ぼっこ中だ。のんびりしているからと言って、別にさぼっているわけではない。いわゆる休憩と言うやつだ。(ほら、休憩しないと効率落ちるし)
弦さんと言うのはこの家の主(ここはは離れで、私は居候中である)お世話になってばっかりだと悪いんで手伝えることがあれば手伝いつつ、村でただ一人の医者してます。

え?今までの話と違う?いやーちょっとばかし色々ありまして・・・
話すと長くなるんですが、―――タイムスリップしちゃいました。


事の始まりは、屯所から帰った私は疲れた体に鞭打ち山に薬草探しに行ったわけだけど、いつもより奥の方まではいっちゃたの。理由は珍しい、ほとんどこの山ではお目にかかれない薬草がなっておりそれを摘んでたらいつの間にか・・・って感じね。さらに珍しい、買おうとすれば私の一月分の生活費は飛んでいきそうなぐらいな高価な薬草がなっててすっげーついてる!って思い、手を伸ばしたところウサギに持っていかれた。あとちょっとなのにタッチの差で負けた・・・ウサギなぞに・・・

それでも諦めきれない私は奪い返すべくウサギを追いかけさらにさらに、山の奥に入って行ったんだけどいつの間にか地面がなくなっていて、いや、正しくはなくなっていたんじゃなくて大きな穴にも気づかないで落っこちた訳なんだけど。

それで落ちたら、落ちる前の場所と似たような場所にでた。けどこれっておかしいよね?穴に落ちたら穴の中のはずなのに、相変わらず森ってありえない。そう思ったけど出ちゃったものは疑いようもなく、そういうものかな?と無理やり自分を納得させ(騙すでも可)さすがに下山しました。そしたらね、無いの。どんなに見渡しても目をこすっても出てこないし、やっぱり穴に落ちたショックで気絶して夢でも見てるのかもとほっぺを抓ってみたけど無駄だった。何が無いかと言えば、村がない!!私が暮らしていた村がきれいさっぱりなく、更地になってました!!これこそありえん!

呆然としていた私だけど、こんなことしていてもどうしようもないと思いなおして、人に出会うべく周りを散策してたら、隣村に着いちゃった。たぶんだけど。
それで村人Aにあれこれ聞いたら、なんと私が山に入っている間に10年間もたっていたらしい。とりあえず今日が4月1日じゃないかを確認してから驚きました。常識人の私はすぐにそんな荒唐無稽な話信じたわけじゃないけど、湧いて出てきた村人Bが知り合いだった場合信じない方がおかしい。村人Bもとい、弦さんは元よりおっさんだったのが10年たつとおっさんじゃなくおじいさんに近くなっている。初老と表現できるとも言える。

もちろん弦さんにも驚かれた。10年前私がタイムスリップしたすぐ後ぐらいに天人(タコみたいなすっげー気色悪い奴)により村が焼き払われたらしい。何でも、攘夷志士に手を貸しているやつがこの村にいる!とか言って襲ってきたんだって。その話を聞いてちょっと思ったんだけど、それってもしかしなくても私の話?うん、屯所の診察のことは黙っていよう。バラすのは身の危険を感じる。ってこんな軽く言えるのは被害が人に及ばなかったからなんだけどね。その天人どもは村を襲いに来た時、前口上がすんげー長かったらしく、皆財産抱えてとんずらできたみたいだし。
結局燃やされたのは家と人的被害は私一人だと思われてた。その私も家にいなかったから実は無事だったとも言える。

事情を理解してくれた弦さんは私を離れに居候させてくれることになり、半年ぐらいだって、最初の会話に戻るってとこです。


「あーそう言えば私江戸に行こうかなーって思ってるんです」

「ほーそれはまた何でじゃ?」

「さすがに十年も未来に来ちゃうと医療の知識が半端なく進んでるので、最新の医術を学びたいなーって思って」


この村の医者をしているといっても、私の医療の技術は十年前のものであきらかに遅れている。こんな辺鄙な田舎だからまだこんな腕でも何とかなっているが、ちょっと待ちの方まで出てみれば医者を名乗るのが恥ずかしくなるぐらいのもんだ。十年+天人の持ち込んだ技術のおかげで飛躍的に進歩している医療技術はめずらしく私の向上心や好奇心を刺激した。最新技術を習うなら江戸だろと行き先を決定したわけだ。


「そうかー後のことは良太にでも任せればええし、気にせんで行って来い。まぁ、少しばかり寂しくはなるがな」


良太とは医者を志す(女の子限定で)心優しき少年である。
私の弟子ってわけではなく隣村に住んでいるおじいちゃん先生(私のおじいちゃんではなく、皆からそう呼ばれている。ちなみに十年前から外見がかわっていない)の弟子で、最近ではよく村に帰ってきて(女の子の)病人やけが人の世話をしてくれている。


「ありがとうございます。それにこの半年随分お世話になりました」

「いやいや、わしらこそ世話になった。お前さんが来てからはちょっとしたことで隣村まで診せに行かんでようなったと皆喜んでおったぞ」

「まあ、大分と古い腕ではありますが」


弦さんと目が合おうと、二人して笑いあった。
こうしてのんびりできるのも最後かと思うと少しさみしい気がするが、このままここに居てもすぐに役立たずになることは目に見えているし、私としてもお荷物はごめんだから自分のできる限りのことをがんばりすぎない程度にやることにした。

そう言えば、銀時くんたちは攘夷戦争ですごい活躍したらしいよ。
“白夜叉”とか“狂乱の貴公子”って呼ばれてたらしい。次あったらネタにして笑い転げれるわ。







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後書き
こっからやっと原作突入させたかったんだけど・・・序章的なものということで・・・


2010/07/27