第三訓
「おじゃましまーす」
玄関(といえるほど上等のものではないけれど)を入り、一応声をかけた。
ここは先日、夜中にたたき起こされた挙句死臭漂う中で過酷労働させられた攘夷志士たちの本拠地だ。
結局あの後何度か呼び出されたり、患者を私の家に運び込まれたりしているうちに私は掛かりつけの医者みたくなっている。
「ん?先生じゃん。いらっしゃい」
「って、銀時君絶対安静って私言わなかったけ?」
言ったよね。絶対言った。最初に直した傷だけでも死んでいてもおかしくないぐらい重傷だったのに、更に2,3日後にまた同じような度合いの怪我を負っていたはずなのに・・・立って歩いてんのが私には信じられません。ほんと体力だけは化け物波なんだからこのテンパ。
「・・・あー・・・そんなこともあったようななかったようなー・・・」
目線はあさっての方向で冷や汗だらだら。ついでに体は今にも逃げ出そうとばかりに回れ右をしている。けど、そんな銀時君を逃がしてあげるほど私は優しくないのでしっかり絶対安静の理由の一つ、ぐっさりやられた腕を握ってあげた。
「ありました。絶対完璧にいいました。何で君は私の言うこと聞かないかな?いい加減にしないと手足ちょん切って動けないようにしちゃうからね」
「い、いたいたいた!痛いって!マジで痛いから!そして何気にグロ怖いこと言ってるし!!」
「そら痛いだろうね。これで痛くもなんともないとか言われちゃ神経疑っちゃうもん。もしくはマゾ」
「イタイタイタイタイ!本当にごめんなさいもう勝手なことはしませんのでどうぞお手をお放しくださいませ様。しゃれになんないぐらい痛いです」
「わかればよろしい」
銀時君の腕から手を放した。
そろいもそろってここの患者どもは私のいうことを聞かない。銀時くんを筆頭に辰馬くんやら晋助くん、小太郎くんもその他大勢もね。まったく医者泣かせもいいとこだ。攘夷志士を見てくれる数少ない医者の言うことぐらい素直に聞けないもんかね君たちは!いい加減にしないと薬の代わりに毒飲ませんぞ。
「先生先生、すんごい怖い思考駄々漏れってるって」
「え?あれ?ま、いいか」
「よくないよくない」
「そんなん気にしてたら世の中渡っていけないぞっ」
「・・・・ソウデスカ」
「むかつく反応だけどまぁ許してあげよう。さて、君はさっさと部屋戻って横になる。どう見ても重症患者なんだからね」
ほんとに何でこの子今歩いて普通に喋ってんのかな?私だったら痛さのあまり布団の上でのたうちまわってるっての。
もう、体が頑丈とか回復能力が高いとかそんなレベルじゃないし、実はあの怪我したの銀時くんとは別人ですって言われても納得しちゃうかも。・・・そんなわけはないけどね。
「じゃあ、私は回診行ってくるけどちゃんと休むのよ。自分の体なんだから大事にしなさい」
ここでいつまでもくっちゃべってるわけにもいかず、まだまだ沢山いるけが人のところに足を向けた。
相変わらず怪我人に衛生状態が悪いための病人がどっちゃり。何度言っても治らないこの汚さはどうにかならないだろうか?やっぱり男所帯なせいなのか・・・いっそ私ここの住み込んでそっから面倒みいなきゃいけない?嫌過ぎる!断固反対!ってなわけでこの案は却下。
あーでもマジにここ何とかしなきゃ治るもんも治らないわよ。
「ってなわけで、小太郎くん君を屯所衛生状態向上委員に任命します」
「ふむ了承した。して、何をしたらよいのだ?」
「掃除。この建物の隅から隅までキッラキラにビシッときれいにして頂戴」
「と言う訳だ、辰馬ファイト!」
「辰馬くんに手伝ってもらうのもいいけど、もちろん小太郎くんもやるのよ。次来た時にきれいになってなかったら、・・・わかるわよね?」
私の輝かんばかりの笑顔を見て怯えるとかこの子たち失礼ね。
まあ、わかってくれたみたいだし良しとしよう。
今日の仕事も終わったし、薬草の補充にでも行きますか。
今から山はいるのは面倒だけど薬なかったら話になんないもんね。四の五も言ってらんない。あー医者って割に合わない仕事だー
<<back
■
next>>
後書き
すんごい久しぶりな銀魂更新・・・
2010/07/15