01.始まりの始まり
同じ顔が三つ。見事なドッペル加減だ。
「なー俺旅に出ようと思うんだけど」
「ダメだな」
「ダメだね」
「ダメすぎる」
・・・いやそう言われると思ったけどさ!
ってか、三人とも今やってる作業から顔をも上げずに即答かよ!
「はぁー・・・あんな、ものすっごいヒマなんだよ。ここにいても俺にやれることなんてないし、むしろ居ない方がいいようなもんだしさ」
「そんなわけがないだろ」
「むしろいなくなった方が私たちにとったら困るね」
「それともあれかい?は私たちのことを捨てるのかい?」
三人とも一糸乱れぬ動きで俺を囲み、捨てられた子犬のような目(これはわざとだと知っていても逆らえない俺対策)で見てくる。
「うっ・・・けど、他の分家とか色々な奴の視線(その他もろもろ)が痛いんだよ!いくら四つ子だとも言っても俺はどう頑張っても雪那にゃなれんからな」
そう、俺は目の前の同じ顔をもつ三人と兄弟で四つ子なのだ。しかも、四つ子は不吉だからと殺されそうになったが、親父殿の提案で雪那のふりをしてばれなきゃ殺されないという条件で生かされることになっているが、俺は見た目からして違うのでとりあえず後の二人がばれなきゃ俺も生かしといてくれるということになった。
それと、これは誰にも言っていないが前世?の記憶持ちという特技もある。前世の記憶が特技かというとなんともいえないが、少なくとも四人の中では俺は異質だと思っている。
今、まったく関係のないことだが前世の世界はそーとーエグかった・・・
特に、俺が暮らしていた場所がトシマといって政府にも見捨てられていて、何でもありという感じの無法地帯。そこでタグを奪い合って殺し合いなど日常茶飯事の出来事だし、女が極端に少ないから男でも犯されるというものすごーく恐ろしい場所だ。まぁ、そこで俺もそこそこワルをやっていたんだがな・・・
しかし!今は丸くなったと思っている。生まれた瞬間から自我があった俺としては四人の中で一番最後に生まれきたとしても、全員年の離れた弟にしか思えない心境だったのだ。
小さい頃はそれは本当に可愛かった。わがままだったが、何故か俺にだけ素直で猫可愛がりしたものだ。
と、話がそれたがとりあえず俺はこいつらに弱い。
「今の当主は私たちだよ?そんな奴らなんて気にしなくていい」
「そうだね。それでも気になるというのなら処分してしまおう」
「それがいい。私たちのに手を出そうとは思い知らせてあげないといけないね」
「やめれ。そんなことしなくてもいいから、旅に出る許可くれって」
―――見つめ合うこと、数分。
先に折れたのは向うだった。
「・・・しょうがない」
「君はいくら止めても出て行くのだろう」
「せめて文ぐらいは豆に寄こしてくれ」
「ん、ありがと。雪、月、花どこにいてもお前らのことは好きだからな」
確かに俺はこいつらに弱いが、こいつらだって俺に対して甘い。
渋々といった感じではあったが、なんとか旅の許可をもらい広い世界へと出発したのが雪がちらつく冬のことだった。
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後書き
ついうっかりはまっちゃいました☆
藍ラヴィユー。あと悪夢の国試組も大好きvv
そんなわけで、藍家の三つ子+1にしてみました。四つ子だけど一人だけ顔が似てないってか転生?前世の記憶持ち設定です。しかも前世は咎狗で最凶だったり。最強じゃなくて最凶ってトコがみそ
2008/8/10