02.天の助け?いや、まさかそんなものじゃなく悪魔だった









旅に出て、ひと月が経とうとしていた。
家を出たころにはまだ寒くなりだし、初雪だなと思っていたぐらいなのに今はというと


「いい加減雪やめー!!」


どこを見渡しても白銀の世界。というか真っ白で飽き飽きしていた。
山に入ったのはいいが、寒さとどこもかしこも雪のせいで真っ白になり方向感覚を狂わされ迷子になってはや三日。


「冬の山を舐めてた・・・」


最初は何とかなるだろうと高を括っていたが、それがいかに楽天的だったかを思い知らされる破目となっている。
とりあえず見つけた洞窟で寒さをしのいでいるが、食料が底をつきかけて俺はどうしようかと頭を悩ませていた。
すると、外から複数の馬の足音が聞こえてきたのだった。絶望的な状況の中、これ幸いと助けを求めるために洞窟から出るといきなり何者かに首元に刃を突きつけられている。後ろから押さえられているので姿が見えないがかなりできると確信する。


「お前何者だ」

「それは俺の台詞だっつーの!テメーこそ何もんだ!?いきなり人様の首に刃物突きつけて何のようだ!!」


最初は油断し、後ろをとられてしまったが俺だって伊達に今まで生きてない。ってか前世で襲ってくる奴を片っ端から撃退していたわけじゃない。
いい加減切れそうになっていたその時、俺が外に出た原因の馬に乗った奴が、優雅に目の前に来た。


「何だそれは」


―――ブチッ

何かが切れる音が聞こえた。
いくら温厚な俺様だからって我慢の限界いがある。問答無用で刃物をつきつけられ、しかも上から目線でそれ扱いされた日にはブチ切れてもしかたないだろう。


「一言目がそれか!」


俺の首に刃物を突きつけていた奴の腕を押さえ、腹に肘鉄をお見舞いしてやった。一発KOだ。得物を地面に落とし、倒れたそいつは全身真っ黒でたぶん、いわゆる影ってやつなんだろう。俺も藍家にいたとき何匹か張り付いていたのを知っている。
影がついているってことは、こいつはお偉いさんってことだろう。かくいう俺もお偉いさんなんだがな。
そんなことを考えていると、5、6人の影がわいて出てきた。全員殺気びんびん得物スタンバイオッケーな状態だ。

・・・ふっふっふっふ
この俺様を舐めんなよ!久しぶりに腕が鳴るぜ。
俺も地面に落ちている小刀を拾い準備万端にし


「さっさとかかって来いよ」


挑発してやると影は一斉に動き出した。


「やめろ」


俺と影たちの距離があと数十センチと言うところで、高みの見物をしていた偉そうな男の声によって止められた。
影たちは一応止まったが何かあればすぐさま攻撃するぞっと言うような体制である。


「あぁ?何で止めんだよ。こっちはテメーらの所為でムカついてんだから、ちょっとぐらいボコんねぇと気が落ち着かねぇんだよ」

「ふん、お前刺客ではないようだな。何者だ?」


まじで偉そうな態度だなコイツ。お前こ何者なんだよ!
けど、心のひろーーーい俺はこいつの問いに答えてやることにした。


「旅人。適当に旅してこの山に入ったのはいいけど、雪降ってくるわ道わかんなくなるわで立ち往生してたトコだよ」

「ばかだな」


ぷっちーん
今回二回目のブチ切れです(満面の笑顔で)


「死刑けってー」

「ふん。まぁいい私が保護してやろう」


だ・か・ら・なんでお前はそんなに偉そうで上から目線なんだよ!人の話し聞かないしな!!
我慢だ俺。ここでこいつをぶち殺しても状況は改善されないんだから、大人しく助けてもらうまでは我慢だっ
必死で自分に言い聞かせつつ大きく深呼吸を一つし、気を落ち着かせた。


「・・・で、助けてもらえるのは実際めっちゃ助かるんだけど、アンタどちらさん?」

「お前は礼儀もしらないのか。名を聞く前に自分から名乗ってはどうだ?」


落ちつけー俺!落ち着くんだ俺!!
テメーに礼儀を語られたくねぇよとかものすっごい叫びたいけど我慢するんだ俺。


「藍


思いっきり不満ですという表情を顔に貼り付けながら名を言うと、偉そうな野郎は一瞬動揺したように見えた。


「ほーお前が藍家の四男か。自分の家の面倒も満足に見れない藍家のね」


すっげー含みのある言い方。


「何だよ。意味わかんねぇだけど!ってか、俺は自己紹介したんだからお前もしろよ」

「紅黎深だ。お前たちに迷惑をかけられた邵可兄上の弟だ」


こうれいしん?聞いたことある。ってか邵可殿の弟?嘘だろ。絶対嘘だ!あの邵可殿の弟はぜってぇこんな高慢ちきなえばりくさってふんぞり返ってるやつのわけない!


「嘘つけ」


思わず本音をポロリとこぼしてしまうと、ものすごい殺気のこもった目で見られた。


「何?お前本当に紅黎深なわけ?」

「だからそう言っているだろう。頭の悪い奴だな」

「・・・わかった。んじゃ黎深、俺倒れそうなぐらい寒いんだけど」


頭悪い発言は大人な心で聞かなかったことにしてやって、今切実に直面している状況を心のまま言ってみた。
本当に寒いんだよ。ついさっきまでこいつのせいで忘れてたけど、俺寒すぎて凍死するトコだったんだよな。








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後書き
黎深様とーじょの巻き
プッツンきまくりの主人公でした"ヽ(´▽`)ノ"


2008/8/14