No.02






「篠ノ女の奴遅いな、まったくどこで道草をくっているんだか」


紺は鴇(どうせ相手にはわからないけど鴇って呼ぶことにした)をお医者さんに診せるために出かけていったのだが帰って来る様子が全然ない。
朽葉はとうとう痺れを切らしたて迎えに行くみたいなので、どうせ暇な私もついていく事にした。









町を朽葉と二人で歩きながら紺と鴇を探すがなかなか見つからず、いい加減帰りたくなってきた頃になにやら人だかりを発見。
気になって朽葉に見に行ってみようとジェスチャーし近づいてみると紺だった。しかもまた喧嘩らしくてそれを見た朽葉が我慢の限界を超えて華麗なるとび蹴りを披露している―――もちろん紺に向かって。


「貴様は道案内のひとつもできんのか―――!!」

「って―――!!お前は人の頭を何だと思ってバキッごっ・・・」


私は二人のコミュニケーションのとり方を知ってるし慣れてるからいいけど、町の中でするのはどうかと思うよ?ああ、周りの人も面白がって煽らないでお願いだから・・・
鴇もビックリするよね。紺の喧嘩相手だった男の人と二人で呆然としてるし・・・
とりあえず、鴇の方を気にするなとでも言うようにポンッと叩いておいた。
決着がついたみたいで(もちろん朽葉の圧勝)朽葉は男の人に視線を向けると、男の人はビクッと怯えている。


「お・・・おい、なんなんだよお前」


ご尤もで―――いきなり現れて相手を問答無用でぼこぼこにしていたら誰だって怖いよね


「貴様も安いケンカを売るなみっともない!!」


朽葉ーそれは挑発してると思うよ―――・・・そうこうしている間に男の人は引きずられていって私たちは沙門さんのところに向かうことになった。
鴇と朽葉が自己紹介してるんだけど、鴇はすこし寂しそうな何ともいえない微妙な雰囲気をかもし出している。それに対して朽葉が頭にくると言い放ち、ずんずんと先に歩いていってしまった。
私はそんな朽葉が気になり急いで追いかけたが、男二人は話しながらゆっくり後ろから歩いてきている。
朽葉はきっと鴇が何の苦労もなしに漫然と生きてきたのだろうと、そんなところが許せないのだと私は思った。もちろん、鴇の考えていることも朽葉が考えていることも、他人の思考なんて100%伝わるものじゃないし自分のことも伝わるわけじゃない。だから、分からないことだらけだけど推測の域を出るわけじゃないけど、私はそう思ったのだ。


「着いたぞ。こちらで沙門様がお待ちだ」


私は自分の思考に没頭していたらしく、朽葉の声でお寺に着いたことに気付いた。
沙門さんは相変わらず酒臭いままで、寝ている。
そして、朽葉も相変わらず容赦なく沙門様に蹴りをいれ起こしている。(朽葉って沙門様のこと本当に好きなのか疑っちゃう瞬間だよ・・・)


沙門さんの歓迎の言葉と三分間クッキングならぬ紺のお料理教室が終え、みんなでご飯タイムとなった。
紺のご飯は絶品だーとかお嫁さんに欲しいなーとか考えていると、紺がエスパーになったらしく「あほなこと考えんな」と頭を叩かれたついでに「エスパーでも何でもないっつーの。は考えてること顔に出まくってるんだ」とか言われちゃった。
二人でバカなやりとりをしていると、回りでは話が進んでいて沙門さんが考え込むようにあごに手を当てている。


「・・・となると、狐狸のいたずらではなさそうだな」


うーむとうなって、


「なるほど、や紺と出会った時のことを思い出すな。少年!とりあえずはここでの生活は俺が世話しよう!!悪いようにはしないから安心しなさい」


やっぱり沙門さんはいい人だな。
沙門さんは手元においておくほうが厄介ごとが少なくてすむとかいってるけど、たぶん気を使わせないようにわざとそんなことを言ってるんだろうなと私は予想をつけている。
それにしても、「異世界から来た」と言われると、確かになかなか恥ずかしいものがあるかも・・・鴇も恥ずかしがってるし


「ムリだ」


あぁ、ずっとわかりきっていることだったけど、改めて言われるとちょっと寂しい気がする。
帰る方法なんてずっと探してきたけど全然わからない。「鵺」と「夜行」が鍵を握っていることはわかるけど、そいつらがどこにいるのか知らないし、たとえ見つけても教えてくれるかなんて保障はどこにもない。
でもここには、紺も朽葉も沙門さんもその他にもいっぱい好きな人たちがいるし、それに鴇も来ちゃったからもうちょっとここにいてもいいかなって思える。
紺と鴇と私たちのいた世界に帰れるようがんばろうって思えるんだ。どんなに時間がかかっても。






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後書き
自分で考えた設定だけど、話せないって絡みずれっす!!

2007/12/18