「よし怪我もほとんど治ったね」

「ああ、助かった」

「いえいえどういたしまして」


あの脱走事件から少しずつ警戒心が薄くなって、今では普通にしゃべるようになった。時々だけど笑みも漏らすようにもなってきた。お前じゃなくて始めて名前で呼ばれたときはちょっと感動だったよ


「そういえばさ、クラトスは何であんなとこで倒れてたの?」

「っ・・・」

「あーいや、話したくなければ話さなくていいんだよ?ごめん」

「いや、ここまで世話をしてもらって何も話さないということはできない。聞いてくれ」

「そう?別に恩を着せようと思って世話焼いたわけじゃないからそれは気にしなくていいからね」

「それだけじゃない、にぜひ聞いてほしいのだ」

「わかった、でもムリしないこと」

「ああ、・・・私の家は古くから続く騎士の家系で父も祖父もこの大戦に参加し散っていった。それで私はアウリオン家の当主を受け継いだんだ。そして私もアウリオン家の当主、いや一人の騎士として大戦に参加したのだが遠征している間に街が敵に攻め込まれ壊滅したとの知らせが入ってきた。急いで戻ったが街の状況は酷いもので私がついた頃には敵も引き上げていて町の人もほぼ全滅だった・・・私は父が死んだ時この家を、家族を絶対に守ると誓ったのに守れなかった・・・私は何も守れなかったのだ。それから全てを失った私は街を出てどこに行くとも知れずさまよっていたら野党の類に襲われあの状況だ」

「っ・・・」


本当に辛そうな顔で話をしたクラトスにアタシは何もいえなくなって、ただクラトスを強く抱きしめた。


「泣いてもいいんだよクラトス」


そういった瞬間クラトスはアタシにしがみついて泣き出した。子供なのに泣くことを我慢なんてしなくていい。悲しい時は思いっきり泣いて楽しい時は思いっきり笑えばいいんだ。だから泣くことを我慢してそんな辛そうな顔なんてしちゃダメなんだ。思いっきり泣いて、泣いて、泣き疲れて眠って起きたときに次に何をすればいいか考えるんだ。そして考えるのは一人じゃなくて周りにいる人といっしょに考えるんだ














「落ち着いた?」

「・・・すまなかった」

「何が?」

「取り乱してしまったことと、それとその・・・」

「アタシの胸で思いっきり泣いたことかな?」


ちょっと意地悪そうにそう言ってやればクラトスは恥ずかしそうに顔を背けた


「ごめんごめん気にしなくていいよ。泣くことは恥ずかしいことじゃないんだから」


クラトスはまだ少し赤い顔で困ったような苦笑いをした。苦笑いでも何でも笑えるんならきっと大丈夫


「あのさークラトス怪我治ったけど行くとこないわけでしょ?ああーごめんそんな顔しないで・・・で、どうせならここに住む?」

「えっ?でも、しかし・・・」

「いや?」

「嫌ではないけど、そこまで世話になるわけには・・・」

「嫌じゃないんならそうしよ!遠慮はなしね。てかアタシがそのほうがうれしいもん」

「え?」

「最初はさ、なかなか懐かないから意地でも懐かしてやると思って色々かまってたけどその内に情がわいてきたというか、動物じゃないからその言い方はおかしいか・・・とりあえずアタシがクラトスにココにいてほしいわけ!」

・・・すまない」

「よし決定ね!それからそういう時はありがとうでしょ?」

「ああ、ありがとう」

「いえいえ、アタシもここにいてありがと。これからもよろしくね」


きっとこれからの生活は楽しくなる予感




02.必要とされてない?




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2007/7/6

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