01.
(side:名もなき下っ端)
ここ数日海賊にも海軍にも会わず、平和な航海が続いていた。
俺は比較的仲のいいやつとふざけながら甲板掃除をしていると、甲板中央辺りに変な図形が現れた。それから、その図形から影のようなニョロニョロした手がたくさん出てきてと思ったら、すぐに引き、残ったのは10歳にも満たない女のガキが一人座り込んでいただけだ。
この事態に甲板にいた連中は警戒を強め、手に武器を構える。そんな様子も気づいてないのか、ガキはキョロキョロと周りを見渡すばかりだった。
緊急事態と言える中、急に現れたガキに近づくのはもうすぐ隊長になるともっぱらな噂のマルコとサッチの二人だけで、他の奴(俺含む)は見ているしかなかった。
天下の白ひげ海賊団と言えど、隊長格は今ここに一人も居なく、悪魔の実を食った能力者かもしれないやつに近づくのは迷われる。
「お前何ものだい」
マルコに声をかけられ、初めて誰か居ることに気付いたガキは改めて周りを観察しだした。
(side:主人公)
海なんて見るのは久しぶりで、物珍しく辺りを見渡していたらよく響く低い声が聞こえた。
「お前何ものだい」
いきなり飛ばされ思考が回っていなかった(海に夢中だということもあったけれども)おかげで周りへの警戒が疎かになっていたらしく、人がいることに全く気付かないでいたことは舌打ちしたいぐらいには失態だった。
船の甲板にはあまり柄がよろしくない男が15,6人。手に武器を持ち、こっちを睨んでいる。
「聞いてるのかよい」
先ほど私に話しかけてきた人物にリアクションを返さなかった為かもう一度声をかけてきた。
「聞こえています。状況が把握できなくて少し混乱していました」
「状況が把握できないのはこっちなんだがねい。嬢ちゃんはここがどこだかわかってないのかい?」
「船の上ってことぐらいしかわかりません」(あと喜ばしい状況じゃないってことかな)
「ふーん、ここは白ひげの船モビーディック号だよい」
白ひげ?モビーディック号?よくわからない。ここが異世界だというのなら、何を聞いても聞き覚えなんてないだろうけど。
そう言えば、言葉は通じるらしい。この男とは会話で来ているのがいい証明だ。見える範囲には特に文字らしきものは目に入らないから、まだ文字が同じかはわからない。この世界で生活していくためには文字も覚えた方がいいのだろうけど、取り合えず陸に上がらないことにはどうしようもないだろう。それともこの世界には“陸”というものがあるのだろうか?もしかしてここの生き物は全て船や船に準ずるもので生活しているということもあり得る。私はまだ陸を見ていなのだからあると決めつけない方がいいだろう。ここは異世界だ。私の常識で物事を考えてしまうのは早合点に繋がる恐れがある。
「・・・い!・・・おい!」
と言うことは、この眼に前の人物だって人に見えて私とは違う生き物の可能性だってある。そう考えると、言葉が通じているのは何かの力が働いている?異種生物の間で言葉というものがはたして伝わるものだろうか。伝わっているようで、全く伝わっていないかもしれない。しかし、今は会話が成立していたということはやはり伝わっていると考えていいだろう。
「おい!聞いてんのか!?」
よく横道にそれる自分の思考に没頭していたら目の前に顔があった。最初に話しかけてきた男の横にいた男だ。
「あ、すいません。ここはモビーディック号という船の上ですよね?白ひげというのは?」
白ひげ?これは人物を表すものだろうか?
「はぁ?お前親父をしらねぇのかよ?白ひげだぜ。今一番海賊王に近いと言われている男、エドワード・ニューゲートだ」
白ひげとはそのエドワード・ニューゲートという人物を表す名詞らしい。この世界では知っていて当り前の名前、常識らしい。
まあ、この世界にははじめてきた私にはわかるはずもなく、今の会話から引っかかるのは“海賊”という単語だ。ここはどうやら海賊の船ということになる。ついてない。
無事この場所を切り抜けるためにはどうするべきか?海賊船の対処の仕方など全くわからない。アメストリスには海がなく、よって海賊なんてものは出ようはずもない。山賊と似たようなものかな?しかし、海の上にはこの船しか見えない。今、海に飛び込んで逃げたとしても犬死するだけだろう。
これからの対処に頭を捻る。とりあえず、困っているということをアピールして保護してもらおうか。海賊相手に通じるかわからないけれど。
顔に人好きのするような苦笑いを貼り付け、「わかりません」と言ってみた。
「そうかい。それじゃあ嬢ちゃんは能力者かい?」
「能力者?」
またわからない単語が出てきた。能力者?錬金術師のことではないだろうし、さっぱりだ。
「さっきお前が現れたのは悪魔の実の能力使ったんじゃないのかよ?こう、変な手がもじゃもじゃーっと出てきたの」
悪魔の実?これはわからないけど、変な手がもじゃもじゃ?真理の扉から出てきたあの手だろうか?
「あなた方が言う能力者というものが何を指すかわからないのですけど、たぶん私は違うと思います」
「悪魔の実も知らねーのか。じゃあお前どうやってここに来たんだよ」
それは私も聞きたい。あの人もどきはどうやったのだろう?
ああ、異世界と言うのはやっかいだ。何もかもわからなくて、どうすればいいのかもわからない。前途多難とはこのことだろうな。
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後書き
いつになったら名前変換でてくるのかな・・・
この頃、マルコとサッチはまだ隊長じゃないってことで。(捏造バンザーイ!)その他の隊長とかはまだ考えていません。適当ですんませんorz
その内設定とかアップします。
20100227