04.





「あー・・・まずは着るもんだな・・・」

「・・・そうですね」


この格好はさすがにまずいことぐらい私にもわかる。いくら子供で何が見えているわけでもなくても、こんなのにうろちょろされたら周りの人たちが堪ったもんじゃないだろう。


「子供サイズの服なんかあったかねい?」

「どう考えてもねぇだろ」


マルコとサッチはどうしたもんかと、頭をかいているけどこの船に今の私に合う服があるとはとても思えない。(あったらあったでいやだけど・・・)
こういう時こそ、錬金術の出番だろう。この世界でちゃんと発動するかわからないけれど、やってみる価値はある。


「あの、その服ちょっと貸してもらえますか?発動できるんだったら錬金術をお見せできると思います」


マルコが持っていた私の軍服を受け取り、ポケットに常備していたチョークを取り出しだ。錬成陣をかいたら服をその中央に置く。これであとは錬成すればいいだけ。
マルコにサッチ、白ひげまでがこの一連の動作を物珍しいそうに見ていた。


「いきます」


頭の中で錬成式を組み立て両手を床につくと、錬成反応のバチバチっと光が出来錬成された服ができた。
この世界でも変わらず錬金術が発動できるということに安心した。自分自身の身を守れるかどうかも定かじゃないぐらいの大きさになってしまった挙句、錬金術まで使えなくなってしまったらお手上げだ。


「できました。この世界でも発動できるみたいですね」

「すげぇな!それが錬金術ってやつか!」


サッチは子供みたいに目をキラキラさせてるし、マルコは「へー」と感心してるのか服をガン見している。白ひげに至っては相変わらず「グララララ」と奇妙な笑い声を響かしている次第だ。
服の件はどうにかなったので、次は部屋に案内してくれるらしく船内に誘導された。
甲板にいた時から思ってはいたが、この船は大きい。船内もそれに見合うだけの広さがあり、船員もきっと大分人数が多いのだろう。
先導していたマルコが止まったということは着いたのだろうか?


「ここだよい。生憎うちは大所帯だが男ばっかりでねい、女はナースだけなんだが生憎空きがない。悪いがここで我慢してくれよい」

「ここって物置ですよね」

「ああ、中のものはすぐに片付けさせるよい」

「わかりました。ここに置いてもらえるだけでありがたいのに文句なんてありません」

「・・・そうかい」


別に物置だろうが掃除をすればとくに支障がなさそうだし、言った通り置いてもらえるだけでありがたいのだから文句なんて出ようはずもない。

それにしても海賊のくせにこんなあっさりと私のことをここに置くなんてよくわからない集団だ。最初、白ひげは“話すか死ぬか”と二極な選択を突きつけられたけれども、あそこで私が話さなかったり嘘をついても殺されなかったように思う。今だから言えるが、白ひげのあの異様な圧力は殺気なんてかけらも入っていなかったし、他の男たちも武器を構えることまではしたがどうも襲ってくる気配がなかった。今の私がこんな形だからと言うのも少なからず含まれていただろうが、甘いということかここの人たちは?いや、こんな小娘ごとき不確定要素があったとしても何とかなるという自身からっと言った方がしっくりくる。
それにまだ、マルコは完全に私のことを信用したわけではなさそうだ。先ほどから警戒されていることがわかる。


「そういや、お前さんの話からすると年は26,7って本当かよい」


ああ、そう言えば白ひげのところでそんなことも言ったな。食いつくの遅くないか?


「そうですよ。見たところマルコさんはまだ20はいってませんよね?中身だけなら私の方が上ということになります」

「ませたガキじゃなくて、年相応の態度だってことかい」

「そういうことになります」


マルコは何とも複雑そうな表情を浮かべた。
私の話を信じていいものか更に迷っている、と言うとこだろう。異世界から来たなんて普通は精神科を紹介するような話しだし、そこに子供の身体で中身はいい大人ですなんてもっと信じられるものでは無いと思う。白ひげはともかく、その警戒心は正解だ。むやみやたらと信じていては何事にも損をするばかりでメリットなどない。

その後、マルコの宣言通り物置となっていた部屋の中のものが全て片付けられた。
そして寝床ぐらいは必要だろうとあまっていたソファーを一つ譲ってくれるらしい。


「今はこんなもんしかないけど、次の島でそろえられるだろい」


陸はあるらしい。まあ、人間がいる時点で陸地がないとおかしいことはわかっていたが。もし、陸がなくこの世界全てが液体状のもので覆われているとしたら別の進化形態になっているだろう。異世界だからと言って変わった進化を遂げていたわけでもなさそうだ。


「その島まではどのくらいで着く予定ですか?」

「あぁー3,4日ってとこだったと思うよい」

「わかりました。色々とありがとうございました」

「別にこんくらいどうってことないよい。俺たちは家族になったんだから遠慮はするんじゃねぇぞい」

「あ、・・・はい」


仲間、家族、ね・・・








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20100410