05.兄弟喧嘩だって偶にはします
「ふーやっと一息つけるな」
「わたしはなにもしていない」
「何、龍蓮お前拗ねてんの?」
「べつに・・・」
か、可愛いかもしんないっ
ちょっとふてくされたような表情をした龍蓮がプイッと俺のほうとは反対、窓の方を向いた。
何で龍蓮が拗ねているのかといえば、あの後宿を見つけるまでにさらに十数回(十からはめんどくさくて数えてない)の襲撃のあったのだが(つーか一歩進むたびに襲われてたようなもんだな・・・)、その度に龍蓮を抱き上げたり自分の背に隠したりと庇っていたのが気に入らないとみえる。(襲われて返り討ちするたびに役人のところまでそいつらを引きずっていくのが面倒だった)
だって仕様がないじゃんか。龍蓮が弱かないっつーことは知ってるけど、誰が好き好んで可愛い弟に賊退治をさせたいと思う?俺はこれでもお兄ちゃんんだんだからな!
「あにうえはわたしをしんようしていないのか?」
「違う、そうじゃないんだ。信用していないとかじゃなくて俺が心配してるだけだ」
たぶん普通の4歳児に対してだった普通な心配具合なんだろうけど、龍蓮は信用されていないと思っているらしい。
それとも俺が過保護なのか?いや、それは断じて違うな。過保護だったら旅に出させないだろうな。
本当は龍蓮に対しての負い目とか兄貴面したいとかいう気持ちからきているのかしれない。そうだったら最低だな俺は・・・
俺が考えていることが伝わったのか龍蓮は眉を顰めたのがわかった。
「たしかに、あにがおとうとのことをしんぱいするのはあたりまえだな。だが、それでじぶんがきずついていたはいみがない。だからぐけいだというんだ」
「あー・・・うん」
兄が弟の心配をするのは当たり前だとか普通に言ってくれちゃってだいぶうれしいじゃねぇかよ。
けどな言い訳すると、最後の襲撃の時にうっかり腕に刃がかすってしまったのはそんなにたいした傷じゃないし、血もすぐ止まったから大丈夫だろうと思っていたからだ。というかザコ相手に怪我したとか恥ずかしすぎて言えない。のにばれてたとかちょっと恥ずかしいじゃねぇかよ!(当に愚兄だな)
「わりぃ。心配してくれてたのか?ありがとな」
「わかったのならつぎからはむちゃはせぬことだな」
「それはムリ。ってかこんなん偶々だ!無茶でも何でもねぇって」
いや、本当に無茶とかじゃなくて偶々偶然だから。
俺の腕に傷を作ってくれた野郎にはお礼として数十倍にして返してやったしな!(ザマーみやがれ)
だから、そのことはさっさと忘れてくれ。お願いだから
「むっ、ぐけいはがんこものだ」
「頑固者で結構。何とでも言ってくれ」
窓に腰掛けている龍蓮の隣に行き、頭がくしゃくしゃになるのも構わず撫で回してやった。
それを鬱陶しそうな困ったような顔をしながらも止めることなくされるがままになっている龍蓮。
結局その後3日は同じようなことの繰り返しだった気がする。昼間外に行けば襲われ、それを返り討ち(当たり前だがアレ以来怪我なんて負っていない)。もちろん龍蓮を庇いつつ。で、宿に帰ればそのことについて龍蓮に文句をたれられる。などなど毎日同じこと繰り返していてよく飽きないなぁと思う。
それで、粗方のゴロツキやら盗賊やら退治し終わった。3日で粗方退治できるってどんだけ襲われてるんだよ俺たち・・・ちょっとへこむぜ。前までこんなに襲われることなかったのに何でだ?龍蓮のせいか?こいつ何か妙なもん引き寄せる体質とか?
そんなこんなんで4日目の朝。
「あーこんなもんか。金も稼げたし、ほとんど賊連中も退治したしどっか他んとこ行くか?」
「それもよかろう、せいぜいきをつけてたびをすることだな。ひとつちゅうこくをしておく。めんどくさいことになりたくなければ、きようにはちかづかないことだ。では、またなあにうえ」
「っておい!」
自分の言いたいことだけ言って、さっさと去って行ってしまった龍蓮の背に虚しくも俺の声はまったく届かなかった。
だいたいあの忠告はなんだ?面倒くさいことになりたくなかった貴陽に近づくなってどういうことなのか。あいつの予言やら忠告やらは曖昧すぎてわけがわかんねぇ。そんでもって後から考えるとこういうことか!となるから無視するのも後味が悪い。まったくどうしろって言うんだ・・・
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後書き
主人公も色々葛藤してるんです。たぶん・・・
2008/9/25